【元銀行員が解説】奨学金の借金が返済できない場合、どうすれば良い?

進学のために、奨学金を利用している人は多いはずです。

非常に好条件で利用できる奨学金ですが、実はそれなりのリスクもあることを、ご存じでしょうか?


下記のサイトにもある通り、奨学金が返済できず破産に追い込まれるケースさえあります。

<外部の関連サイト>:“奨学金破産”の衝撃 若者が… 家族が… – NHK クローズアップ現代+


奨学金のリスクはもちろん、返済できない場合の対処法について事前に知っておくべきです。

ここでは奨学金の返済について、返済できない場合の対策を解説します。


そもそも、奨学金って何?

奨学金とは学生本人が借りる借金

奨学金とは学生本人が借りる借金

「奨学金」とは、進学のために学生本人が借りる借金のことです。

中には「奨学金はもらえるものだ」と勘違いする人もいるようですが、基本的にこれは誤解です。


ちなみに奨学金に似たローンで「教育ローン」がありますが、こちらは親が借主になります。

<関連記事>:【元銀行員が解説】教育ローンの仕組みとは?低金利の教育ローンは?


下の表の通り、奨学金には給付型・貸与型の2つの種類があります。

返済の必要がない「給付型」の奨学金に関しては、「もらえるもの」という考えで間違いありません。


しかし給付型奨学金の審査は大変厳しいため、この制度を利用できるのは成績がとても優秀な、ほんのひと握りの学生に限られます。

そのことから奨学金利用者の大半は、「貸与型奨学金」ということになります。

貸与型奨学金はあくまでも借入であるため、返済の義務が生じます。

奨学金の種類 返済 利息
給付型奨学金
(返済の必要がない奨学金)
なし なし
第一種奨学金
(貸与型奨学金)
あり
※返済は卒業後から
なし
第二種奨学金
(貸与型奨学金)
あり
※返済は卒業後から
あり(利率は0.01%~0.33%)
※利息発生は卒業後から
「奨学金=借金」であることを忘れてはいけません

第一種奨学金以外は利息がかかる

貸与型奨学金には、利息ありとなしの2タイプがあります。

日本学生支援機構の奨学金では、利息が発生しない奨学金を「第一種奨学金」、利息が発生する奨学金を「第二種奨学金」と呼んでいます。


利息が発生するとはいえ第二種奨学金の金利は低く、上限でも0.33%です。

教育ローンでも年率5%を超える金利は珍しくないため、奨学金の金利がどれほど好条件かよく分かります。

<関連記事>:【元銀行員が解説】利息制限法とは?その上限金利は?

使いみちは「学びに関すること」なら何でもOK

奨学金は、学校生活を送るための用途であれば、何に使っても大抵は問題ありません。

たとえば下記のようなものを、奨学金で支払うことができます。


・授業料、教材費、昼食代、文具代
・パソコン、タブレット、電子辞書の購入代金
・家賃、食費、水道代、光熱費、日用品代(一人暮らしや下宿の場合)
・サークル活動費、課外活動費
・留学費用



なお、個人的な遊びのために奨学金を使うことは禁止されているので、注意が必要です。

奨学金を、学費や一人暮らしの家賃に充てるケースが多いです。

機関保証を選ぶと保証料が必要

奨学金の利用には機関保証か人的保証が必要

冒頭でも書いた通り、貸与型の奨学金は「借金」です。

奨学金を申し込む際、万が一返済できなくなった時のために、「機関保証」または「人的保証」のどちらかを選ぶ必要があります。


機関保証とは、保証機関に保証料を支払うことで、奨学金を返済できなくなった場合に肩代わり(=代位弁済)してもらう方法です。

保証料は貸与額や貸与期間、第一種奨学金(無利子)か第二種奨学金(有利子)かで異なります。


第一種の場合は月額500~2,820円かかり、第二種だと月額386~8,344円かかります。

保証料は、毎月給付される奨学金から差し引く形で支払われます。

人的保証には連帯保証人と保証人の両方が必要

それに対して人的保証は、保証機関を利用せず、保護者・親族が保証する方法です。

人的保証を選択した場合、連帯保証人と保証人の両方が必要となります。


連帯保証人は保護者(父、母)のうち1人がなり、借主である学生と同じ義務を負います。

学生本人が支払えなくなった時は、連帯保証人は、残高の全額を返済しなければなりません。


一方の保証人は、4親等以内の親族である必要があります。

<外部の関連サイト>:連帯保証人と保証人について | JASSO


保証人の返済義務は、保証人の人数(連帯保証人含む)で等分に割った金額のみです(これを「分別の利益」と呼びます)。


奨学金の場合、連帯保証人と保証人は合わせて2人なので、保証人は1/2の金額の返済義務を負います。

また学生本人が自己破産した場合でも、連帯保証人や保証人の返済義務は免除されません。


保証人になることは、大きなリスクが伴います。

<関連記事>:連帯保証人とは?保証人との違いを分かりやすく解説



奨学金を返せないとどうなる?リスクは?

貸与型の奨学金が借金であることは、上で説明した通りです。

借金である以上、奨学金には返済義務がありますが、実は奨学金を返済できない利用者が相当数いて、社会問題となっています。

奨学金を延滞する人が増えている

奨学金を延滞する人が増えている

ここ最近では学生の約2人に1人が奨学金を利用し、2014年の調査によると平均借入額は288万円です。

大学の学費が値上がりし、奨学金を借りて卒業したにもかかわらず、いざ就職しても低収入で、奨学金を返済できないケースが増えています。


下記のグラフは、平成19年から28年の、奨学金の延滞者(=1日でも返済が遅れた人)の推移です。

奨学金を返還できない人の数が、10年前に比べて明らかに高水準です。

奨学金の延滞者数のここ10年の推移
出典:返還者数と延滞者数の推移- JASSOから作成

日本学生支援機構によると、2015年度末時点で奨学金の延滞総額は、約880億円にも上りました。


「将来はきちんと働いて返せる」と考えていた奨学金の返済に、元学生が苦しめられる事態が増えているのです。

では元学生が奨学金の返済を出来ない場合、日本学生支援機構はどういう形で返済を迫ってくるのでしょうか?


以下では、日本学生支援機構による返済請求(=回収手続き)の流れを解説します。

<外部の関連サイト>:万一、奨学金の返還を延滞した場合は、どうなりますか | JASSO

1人暮らしをしている学生の場合、実家からの仕送りが減り、生活費を奨学金でまかなっている人が多くいます。

1.延滞金が発生し、返済額が増える

奨学金の返済は、貸与期間が終了した翌月から数えて7か月目に始まります。

たとえば大学4年生の3月まで貸与期間だった場合、その年の10月から返済が始まります。


では万が一、奨学金の返済が滞ると、どうなるのでしょうか?

返済期日から1日でも遅れると、遅れた日数分だけ延滞金が発生します。


延滞金とは、通常の利息に加算して支払う必要がある、ペナルティのような追加利息です。延滞金の年率は2.5~10%で、日割りで計算されます。

延滞金の年率は、第一種奨学金か第二種奨学金か、いつ借りたかによって異なります。

2.督促の電話や文書が来る

JASSOから督促の電話や文書が来る

返済期日が過ぎると、日本学生支援機構または債権回収会社が、文書や電話によって返還の催促をします。

またこの時点で連帯保証人と保証人に、延滞していることが通知されます。


ここ最近、日本学生支援機構は、債権の回収に力を入れていますが、実際の回収手続きは債権回収会社に委託しています。

回収業務の一環として、返済義務者(=奨学金利用者、連帯保証人・保証人)の職場に電話をかけたり、直接訪問する場合もあります。


また催促の際には、返済期限を猶予してくれる制度を案内される場合もあります。

後で詳しく説明しますが、返済が苦しい場合は、返済を一時停止できる制度や、返済期間を延ばして毎月の返済額を減らす制度を利用することが可能です。


返済の催促が来たら、放置しないことが重要です。

催促が来たにもかかわらず何もしないと、延滞金の額が膨らんでいきます。

<関連記事>:債権回収会社とは?借金の回収・取り立て代行の仕組み

債権回収会社は電話をする際、滞納していることが周囲に知られないよう本人が出るまでは、会社名でなく個人名を名乗ってくれます。

3. (連帯)保証人が支払いの請求をされる

奨学金の返済に応じないと、債権回収会社は連帯保証人と保証人に債務の支払いを求めます。

連帯保証人の場合、本人と同様の権利を持つため、借入額を全額支払う義務があります。


本人・連帯保証人ともに返済が困難な場合は、保証人に請求が行きます。

なお保証人には「分別の利益」があるため、2分の1だけ返済義務を負います。

逆の言い方をすれば、保証人に1/2以上の、法的な返済義務はありません。

(コラム)日本学生支援機構が保証人に全額請求し、非難が殺到

日本学生支援機構が保証人に全額請求し、非難が殺到

とはいえ現実には、保証人に1/2以上の返済を請求されるケースが多発しています。

日本学生支援機構が、保証人に対して分別の利益を説明せず、奨学金の借入れ全額の返済要求をする回収手続きを行っていたことが、朝日新聞の取材で明らかになりました(2018年11月1日)。


こうした回収手法そのものは、厳密に言えば違法ではありません。

保証人が分別の利益を主張すれば、返済義務は1/2で済みます。


とはいえ法律の知識が乏しい保証人に対して、保証人の責任範囲を伝えずに全額請求を迫る日本学生支援機構の姿勢は、(違法ではないにせよ)横暴に見えます。

日本学生支援機構の手法には、法律の専門家からも批判が集まっています。

<外部の関連サイト>:奨学金、保証人の義務「半額」なのに…説明せず全額請求

4. 事故情報として登録され、新たな借入ができなくなる

返済期日から3カ月以上返済が遅れると、事故情報として信用情報機関に登録されます。

これから奨学金の返済が始まる場合は、返還開始後6ヶ月が経過し、延滞が3か月以上になると、事故情報として登録されます。


事故情報に登録されると、いわゆる「ブラックリストに載る」状態となります。

ブラックリストに載ってしまうと、新たな借入ができなくなります。


カードローンやキャッシングが利用できないのはもちろん、住宅ローンなどの各種ローンが契約できなくなります。

またクレジットカードが使えなくなり、新規の発行も不可能です。


生活の不便を、かなり強いられることになります。

<関連記事>:【元銀行員が解説】金融事故情報(ブラックリスト)とは?

クレジットカードが使えなくなるだけでなく、スマホの分割払いの契約もできなくなります。

5. 一括での返済を請求される

日本学生支援機構から一括での返済を請求される

事故情報に登録されたり、督促を受けても返還に応じないと、日本学生支援機構は利用者や保証人に、延滞金や返済期日が来ていない借金も含め、一括返還を要求します。

奨学金の返還には、最大で20年間での分割返済が認められていますが、延滞によりその権利を失います(これを「期限の利益の喪失」と呼びます)。


奨学金の場合、延滞から9か月以上経つと、一括での返済を請求されます。

それでも支払いに応じなければ、裁判所へ支払督促の申し立てをする手続きに移ります。

6.(保証機関を使ってる場合は)代位弁済が実行される

機関保証を選択している場合、一括返還に応じないと、本人に代わって保証機関が債務を返済(=代位弁済)します。

しかしこれにより、債務が消滅するわけではありません。


弁済した保証機関は、肩代わりして返済した分を本人に請求できる「求償権」を得ます。

求償権を得た保証機関は、利用者本人に弁済額を一括で請求します。


この請求に応じないと、保証機関に対する債務に、年率10%の遅延損害金が加わります。

<関連記事>:代位弁済とは?元銀行員が分かりやすく解説!

保証機関が代位弁済をすると、信用情報機関に代位弁済が履行されたことが追加で登録され、さらに経済信用度が低いと判断されます。

7. 給与や家などの財産を差し押さえられる

人的保証を選択した場合、裁判所から支払督促が来ても返済に応じないと、強制執行が行われ、給料・財産を差し押さえられます。

給料の場合、最大で給料の4分の1が差し押さえの対象となり、振り込まれる前に差し引かれます。


差し押さえは借主本人だけでなく、連帯保証人や保証人の財産・給料も対象となります。

機関保証を選択した場合であっても、基本的な流れは同じです。


保証機関は代位弁済を行った後、利用者に対し、弁済した債務の一括請求を行います。

この請求を放置すると、保証機関が利用者に対して強制執行をします。



奨学金の返済が難しい!何か方法はある?

奨学金を返済できない場合、日本学生支援機構がどういう手順で返済を迫るか、上で説明しました。

延滞のデメリットが大きいのは上で見た通りですが、そうは言っても、返済がどうしても難しい方もいるはずです。


ここでは奨学金の返済が難しい場合の、対処法について説明します。

返済を先送りにする「返還期限猶予制度」

奨学金の返還期限猶予制度と減額返還制度

災害や病気、失業といった事情が生じ、返済が困難となった場合、返済を先送りしてもらう「返還期限猶予制度」があります。

返還期限猶予制度では、最長で10年間返済が免除されます。


返済の猶予が認められるには、条件があります。

・病気で働くことが困難
・失業中
・生活保護を受給中
・地震などの災害に遭い、返済ができない
・無職や未就職、低収入、育休中により経済的に困難な状況


これらの条件の一つに当てはまり、日本学生支援機構の審査に通過すると、何年か支払いを待ってもらえます。


返済の猶予期間中に、返済をする体制を整え、返済を開始することができます。

ただこの制度で、元本や利息が減るわけではありません。

返済額は変わらないことに注意しましょう。

返還期限猶予制度を申請するには、マイナンバーや所定の書類を提出する必要があります。

毎月の返済額を減らす「減額返還制度」

「減額返済制度」は月々の返済額を、2分の1または3分の1に減額し、返済期限を延長する制度です。

決められた返済額は払えないけれど、半分や3分の1の額を払えるときは、この減額返還制度を活用しましょう。


ただこの制度を利用するためにも、災害や傷病、経済的理由といった条件が必要です。

またこの制度も、元本や利息が減額されることはありません。


希望される方は、返済が困難な事情や今後の見通しを詳細に記載し、返済が困難な状況が分かる証明書を添付の上で、日本学生支援機構に申請して下さい。

どうしても返済できない場合は、債務整理を検討する

上で説明した制度を活用しても返済が困難な場合は、債務整理を検討しましょう。

債務整理には、「任意整理」「個人再生」「自己破産」の3種類があります。


ただ任意整理は、将来の利息を減らす手続きであるため、利率が低い奨学金に対しては、あまり有効ではありません。

債務整理をするのであれば、個人再生か自己破産を検討しましょう。


個人再生は、借金を通常5分の1(最大で10分の1)に減額し、原則3年間で分割して返済する手続きです。

個人再生を選択した場合は、住宅などの財産を手放す必要がない等のメリットがあります。


ただし、(減額するとはいえ)借金を返済していく必要があるため、ある程度の収入があることが個人再生を行う条件になります。

一方、自己破産とは全ての借金の免除を、裁判所に認めてもらう手続きです。


自己破産の最大のメリットは、収入がなくても行えること、借金の支払いが全て免除されることです。

しかし借金が帳消しになる代わりに、家や車などの財産も失うことになります。

個人再生も自己破産も強力な手続きですが、デメリットもあります。


一つは債務整理を行うと、事故情報として登録されるため、今後5~10年は借入ができなくなります。

とはいえ債務整理をするということは、すでに延滞で事故情報を登録されている可能性が高く、そこまで大きなデメリットとは言えません。


デメリットの2つ目は、連帯保証人・保証人がいる場合です。

<外部の関連サイト>:奨学金破産、過去5年で延べ1万5千人 親子連鎖広がる

債務整理を検討する際には、連帯保証人や保証人の理解を得るようにしましょう。

本人が債務整理をしても、保証人の支払い義務は残る

奨学金の本人が債務整理をしても保証人の支払い義務は残る

奨学金の返済が困難で個人再生か自己破産をしても、人的保証を選択していると、返済の義務は保証人に移ります。

債務整理をしてしまうと、奨学金の残額を連帯保証人や保証人(多くの場合、家族や親戚)が負担することになります。


日本学生支援機構によると、奨学金関連で自己破産した人は、2016年度までの5年間で約1万5千人にも上ります。

そのうち連帯保証人と保証人の数は、約7000人にも及び、奨学金による負の連鎖が広がっています。


個人再生も自己破産も強力な手法ですが、人的保証を選択している方は、保証人への影響も考えてみる必要があります。

<関連記事>:消費者金融の債務整理で抑えておきたいこと



以上、奨学金の借金が返済できない場合について見てきました。

奨学金の返済ができずに放置してしまうと、延滞金がかかる上に、場合によっては保証人に返済を求められます。


奨学金は、学生本人が借主となる借金です。

奨学金を借りる際は両親とよく話し合い、返済額がいくらになるのかを知った上で利用しましょう。

この記事のまとめ

  • 奨学金とは学生が借主となる、進学のための借金
  • 人的保証を選ぶと、連帯保証人と保証人の両方を用意する必要がある
  • 返済が滞ると延滞金が発生し、最終的には財産が差し押さえられることもある
  • 返済期間を猶予してもらう「返還期限猶予制度」や、毎月の返済額を減らす「減額返還制度」といった制度が用意されている
  • 「個人再生」か「自己破産」を選択すれば本人の負担は軽くなるが、保証人が返済義務を負うことになる


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この記事の執筆者: もぐお

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